住宅業界では、「Low-Eガラス(ローイーガラス)」の存在は当たり前のように知られています。
ところが、世間一般的に「Low-Eガラス」という言葉はあまり知られていないのではないでしょうか?
このLow-Eガラスを分かりやすく表現するならば、「機能性を持つ高性能な複層ガラス」となります。
それでは、Low-Eガラスとは何か解説します。
Low-E複層ガラスとは?
Low-Eとは、Low Emissivity(ローエミッシビティ)の略語。直訳すると、低い放射率。
Low-Eガラスとは、複層ガラス(2枚以上のガラス)の第2面、または、第3面に銀や酸化亜鉛などの金属膜を薄くコーティングしたガラス。
要は、Low-Eガラスは鏡のような窓ガラス。Low-Eガラスは遮熱タイプと断熱タイプがあります。
Low-Eガラスは2種類
Low-Eガラス(遮熱タイプ)
遮熱タイプのLow-Eガラスは窓ガラスの第2面に金属膜がコーティングされています。遮熱タイプの仕組みは鏡をイメージすると分かりやすいです。
遮熱タイプ、Low-Eガラスのメリット
Low-E膜が太陽光の日射熱を反射します。これにより、室温上昇を抑制できます。
Low-Eガラス(断熱タイプ)
断熱タイプのLow-Eガラスは窓ガラスの第3面に金属膜がコーティングされています。断熱タイプの仕組みも鏡をイメージすると分かりやすいです。
断熱タイプ、Low-Eガラスのメリット
Low-E膜が室内の遠赤外線を反射します。これにより、室内の保温性を高めることができます。
遮熱タイプと断熱タイプ共通のメリット
・遮音性が高い
・結露しにくい
Low-Eガラスの用途
Low-Eガラスは一戸建て住宅からマンション、商業ビルまで幅広い建築物に設置できます。
一戸建て住宅の東西南北、全てにLow-Eガラスを設置する場合、遮熱タイプと断熱タイプのどちらを設置した方がいいのかはケースバイケースとなります。
南側の窓ガラス
一戸建て住宅の南側には「断熱タイプ」のLow-Eガラスを設置します。
夏季、建物の南側の窓ガラスから強い日射熱が室内に流入し、室温を上昇させるのであれば、遮熱タイプのLow-Eガラスを設置した方が適切なのでは?と考えがちです。
しかし、その場合、冬季は日射熱が室内に流入しにくくなり、日射取得が難しくなるというデメリットがあります。
一戸建て住宅の場合、冬に合わせた断熱性能を優先させます。
北側の窓ガラス
夏至の日、建物の北側の窓ガラスから太陽光が室内に流入するケースがあります。基本的に建物の北側には、「遮熱タイプ」のLow-Eガラスを設置します。
いったいどっち?
近年、YouTubeで動画を配信する工務店が増えつつあります。
各工務店のYouTube動画を視聴すると、工務店によってLow-Eガラスに対する考え方が異なる場合があります。
北側に「断熱タイプ」のLow-Eガラスを推奨する工務店もあれば、「遮熱タイプ」のLow-Eガラスを推奨する工務店もあるのです。
では、いったいどっち?と混乱してしまいます。
当ブログは、家の北側の窓から日射熱が流入する場合、北側に「遮熱タイプ」のLow-Eガラスを設置するのが適切だと考えます。
東側と西側の窓ガラス
一戸建て住宅の東側から眩しい朝日が室内に流入する場合、東側に「遮熱タイプ」のLow-Eガラスを設置する場合があります。
そして、西側から眩しく暑い西日が室内に流入する場合、西側にも「遮熱タイプ」のLow-Eガラスを設置する場合があります。
なお、建物の立地条件や隣家の関係から、東側と西側から朝日と西日が室内に流入しないのであれば、断熱タイプのLow-Eガラスを設置する方法もあります。
あと、東側と西側の窓ガラスの面積が大きい場合、断熱性を優先させて断熱タイプのLow-Eガラスを選択する場合もあります。
Low-Eガラスの選択は難しい
先ほどのように、YouTubeで動画配信している建築士によって、Low-Eガラスの選択(遮熱 or 断熱タイプ)について見解が分かれています。
高気密高断熱住宅がデフォルト化している背景から、窓ガラス選定の難易度が増していると言えます。窓ガラスの選定次第によって、室内空間の快適さが変わってきます。
日本の場合、北は北海道から南は九州、沖縄まで気候が大きく異なります。
そして、建物の立地条件によって日当たり具合が異なります。一戸建て住宅、マンション、商業ビルの違いによって当然、日当たり具合が異なります。
また、夏至と冬至では、太陽高度が大きく変わってきます。
建築物は1棟1棟、立地条件と周囲の環境が異なるため、Low-Eガラスを設置する場合、窓ガラスに関して見識の高い設計士との打ち合わせが大切です。
Low-Eガラスの厚み
Low-Eガラスの厚みは、ガラスの厚みと中間層によって異なります。
(一例)
3mmガラス+中間層(6mm or 12mm)+3mmガラス
3mmガラス+中間層(6mm or 12mm)+4mmガラス
3mmガラス+中間層(6mm or 12mm)+5mmガラス
Low-Eガラスにガラスフィルムの施工は可能?
Low-Eガラスのタイプと設置環境、そしてガラスフィルムの種類によっては、ガラスフィルムの施工ができます。
2000年前後から窓シャッター(雨戸)が未設置の一戸建て住宅が増加しました。台風による飛来物が窓ガラスを直撃すると、一瞬でひび割れやガラス飛散のダメージを受けます。
窓ガラスにガラスフィルムを施工後、台風による飛来物が窓を直撃しても、ガラス飛散を防止できます。
なお、Low-Eガラスと相性が良くないガラスフィルムもあり、そのようなガラスフィルムの施工はガラスの熱割れリスクが高まります。
一般の方が断熱シートやガラスフィルムなどを入手し、Low-Eガラスに貼り付けるとガラスが熱割れすることがあります。
Low-Eガラスにガラスフィルムを施工する場合、専門知識と現地調査による判定が必要です。自宅の窓ガラスがLow-Eガラスや複層ガラスの場合、プロのフィルム業者へのご相談をおすすめします。
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