家づくりを検討中の子育て世代の間で、住宅の「UA値」を気にする方が増えつつあるようです。
大手ハウスメーカーや工務店のオフィシャルサイトの中には、堂々と大きな文字で「UA値:0.55W/m2・K」といった数字が表示されています。
ほとんどの方にとって、UA値なんて難しい数字ながら、このUA値とは家の断熱性能を示す値。確かに、家の断熱性能を判断する上でUA値は参考になる数字。
家について素人であるお施主様にとって、家の断熱性能が数字で表示されていれば、一目で家の性能を判断できます。UA値を大まかに理解すれば、便利でわかりやすい指標。
しかし、家の設計時、ビルダーが安易な発想でUA値を下げようとすると、冬は部屋が寒くなる可能性があります。
「高気密高断熱住宅なのに、じゃ、いったい何のためのUA値?」という話になってしまいます。
家づくりを検討している世代の中には、高気密高断熱住宅を念頭に置き、情報収集に余念がない方が少なくないと思います。
しかし、家づくりのプロセスの中でUA値だけに拘っていると、大きく失敗してしまう可能性を否定できません。
では、UA値と家にとって大切な日射取得について解説していきます。
UA値とは?
UA値(外皮平均熱貫流率)とは、家の室内から床、壁、屋根、開口部(窓)を通して室外へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値。単位は「W/m2・K」。
数値が小さいほど室内の熱が室外へ逃げにくく、夏の外の熱が室内に伝わりにくい省エネ住宅です。
UA値 = 外皮総熱損失量/総外皮表面積
UA値の計算方法
問題のあるUA値を下げる方法
家の屋根、壁、床、窓の中で一番、断熱性能が低い場所は「窓」。窓がトリプルガラスであっても、それは、壁や屋根の断熱材の断熱性能には及びません。
冬季、窓からじわじわと室内の熱(遠赤外線)が外へ逃げています。同時に、外の冷気で冷やされた窓とサッシが室内を冷やします。
そして夏季、日射熱が窓から室内に流入します。
建築物にとって、最大の弱点は「窓」。
つまり、UA値を下げるには、窓の性能を上げてサイズを小さくすれば、簡単にUA値を下げることができます。もちろん、熱貫流率(U値)が小さい高性能な窓が必要。
しかし、問題のある一例として、リビングの高さ2mの掃き出し窓をやめて、細長の縦すべり出し窓×3枚に変更します。計算上、UA値が下がります。更に、窓のコストが下がって一石二鳥。
まれに、以下のような家を見かけることがあります。
事実、当ブログの管理人は下図、右側のような家を何回か目にした経験があります。
上図、2軒の家は南に面しているとします。通常、南側の1Fリビング窓は採光と日射取得を確保するため、大きな掃き出し窓を設置します。
ところが、イラスト右側の家には、縦すべり出し窓が3枚、設置されています。これにより、家の断熱性能は高くなります。
しかし、冬季、日射熱取得率の値が低下し、リビングに入る日射量が少なくなるのです。
冬の日射取得も重要
建築士がUA値だけにこだわって1Fリビング窓の面積を小さく設計すると、確かに計算上のUA値は下がります。
しかし、リビングに入る日射量が減少すると日射熱取得率が小さくなり、
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冬季、室内が寒くなる。
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エアコン暖房の負荷が高まる。
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冬季の電気代が高くなる。
このように高気密高断熱住宅であっても、UA値を良くする(値を小さくする)ために日射取得を犠牲にすると、冬季、空調のランニングコストが上昇します。
これでは、エコ住宅とは言い難くなってしまいます。
冬季、日射取得は家にとって重要な要素。
日射熱を上手に室内に取り込んでも、太陽から請求書は届きません。日射熱は無料の熱。
冬季、リビングの掃き出し窓から約600Wの日射熱が室内に流入します。600Wとは、コタツの熱量に相当します。
だからこそ、南向きのリビングに複層ガラスが組み込まれた掃き出し窓を設置することで、冬季、暖かく住み心地がいい家になります。
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UA値が家の全てとは言えない
以上のように、ビルダーが「UA値を下げるには、どう設計しよう?」と、家のUA値を下げることだけに拘り、南側の窓の面積を小さく設計してしまうと、冬はエアコン暖房の負荷が増します。
これでは、いかに優れたUA値の家でも疑問符が付きます。
極端な話、窓を可能な限り小さくすれば、家のUA値は小さく暖かくなります。しかし、建築基準法上、窓の面積は床面積の1/7以上が必要です。
家の設計と立地条件は千差万別のため一概には言えないものの、家の南側になるべくU値(熱貫流率)が小さく、大きめの窓を設置して、採光と日射取得を確保します。
いわゆる、パッシブ設計と言われるものです。
そして、他の東西、北面の窓を小さく設計することで、家の断熱と日射取得を兼ね備えた家になります。
西面に窓が無い家
管理人が自動車で移動しながら新興住宅地の家々を眺めていると、家の西面に窓が無い家を見かけることがあります。あるいは、採光の小窓が設置されているくらい。
家の設計と間取りによっては、西側の窓の設置をやめることで、住人は眩しく暑い西日の影響を受けなくなります。
家のトレンドが高気密高断熱住宅、そして、パッシブデザインを取り入れる方向へ進んできたため、南面の窓は大きく、東西、北面の窓が小さい家を多く見かけるようになりました。
夏の暑さ、冬の寒さ対策
以上のように、家の断熱性能を下げてしまう場所は「窓」。
一例として、YKK AP APW430トリプルガラス(アルゴンガス仕様)+樹脂サッシの熱貫流率(U値)は「1.13W/m2・K」。
このAPW430は窓の中では高性能タイプに入ります。
それに対して、天井のU値が「0.3」、壁のU値が「0.6」といった高気密高断熱住宅は存在しています。
高性能な窓であるAPW430であっても、そのU値は天井や壁より大きいのです。つまり、APW430は天井や壁より断熱性能が低いのです。
夏の暑さの約70%は窓が原因
夏の暑さの約70%は窓が原因です。
そこで暑さ対策として、夏の暑さが気になる場合、窓に「遮熱フィルム」を施工します。これにより、日射熱を30~70%カットできます。
日射熱をカットすることで、夏の室内の暑さを和らげて快適な室内空間を整えることができます。同時に、エアコン冷房の負荷が減少し、節電効果が得られます。
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冬の寒さの約60%は窓が原因
冬の寒さの約60%は窓が原因です。夏も冬も、窓を通して熱が出入りしてしまいます。
そして、冬の寒さが気になる場合、窓に「遮熱断熱フィルム」を施工します。これにより、冬季の室内の熱(遠赤外線)が外へ逃げにくくなり、快適な室内環境を整えることができます。
よって、エアコン暖房の負荷が減少し、節電に繋がります。
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