Low-E複層ガラス,Low-Eガラス,ペアガラスにフィルムを貼れる?

ペアガラス、複層ガラス 窓ガラスフィルム-ブログ
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地場工務店や大手ハウスメーカーの各オフィシャルサイトを閲覧すると、もはや「高気密」と「高断熱」というキャッチコピーが合言葉と化しています。

じゃんけんの時、「最初はグー」と同じようなもの。

高気密高断熱住宅が増加したこともあり、以下のような【窓】を選ぶお施主様が増加しました。

・ペアガラス(複層ガラス)+樹脂サッシ

・ペアガラス+アルミ樹脂複合サッシ

・Low-E複層ガラス+樹脂サッシ

・Low-E複層ガラス+アルミ樹脂複合サッシ

今や、複層ガラスの窓を設置した一戸建て住宅が大多数。分譲マンションも複層ガラスの採用が増加傾向にあります。

複層ガラスが選ばれる大きな理由として、高断熱住宅を実現するためには、窓ガラスとサッシに高い性能が求められるからです。

この複層ガラスやLow-E複層ガラス(ローイーガラス/ろういーがらす)は、普通のフロートガラスと同様、室内から外の見え方、そして、外から室内の見え方は大きく変わりません。

当然、窓ガラスの設置場所によっては、外からの視線や紫外線、夏の暑さと冬の寒さ、防犯が気になります。

これらの対策として、高性能な窓に目隠しフィルムやUVカットフィルム、ミラーフィルム、遮熱フィルム、遮熱断熱フィルム(遮熱シート)、防犯フィルムなどを貼り付ける方法があります。

そこで、当ブログは複層ガラスやLow-Eガラスにはどのような特徴や種類があるのか?そして、窓に相性が良くないガラスフィルムを貼ると、窓ガラスが熱割れする理由について解説します。

なお、建築物の住宅設備は裾野が広い業界。窓ガラスとサッシの情報だけでも、それだけで、各メーカー毎にラインアップが豊富で充実しています。

当ブログの管理人が深いお話をすると、それだけで膨大な情報量となってしまい、当ページの主旨から外れてしまいます。

当ページでは、ペアガラス(複層ガラス)とLow-E複層ガラスの基本的な情報とガラスフィルムの関係、注意したいガラスの熱割れについて解説します。

[窓]+ガラスフィルムで快適空間-ガラスフィルムが室内の様々なお悩みを解決。プロ業者が施工する、ガラスフィルムのラインアップ。

複層ガラス/ペアガラスとは?

複層ガラスにガラスフィルム施工

建築物のサッシに2枚以上の窓ガラスが組み込まれているものは「複層ガラス」と呼ばれます。

複層ガラスには、2枚のガラスを組み合わせた「ペアガラス」、そして、3枚のガラスを組み合わせた「トリプルガラス」があります。

更に、超が付くプレミアムな窓として、LIXIL/リクシルのレガリス/LEGARISは5枚のガラスが組み込まれています。レガリスの熱貫流率は、なんと「0.55W/m2・K」!

もしかして、建築士の方は「0.55」という数字を見て、「レガリスは壁ですか?」と呟いてしまうかもしれません。

ただ、レガリスのようなプレミアムな窓は特殊なハイスペック仕様で高価。一般的な複層ガラスの多くは「ペアガラス」や「トリプルガラス」がほとんど。

これらの複層ガラスのガラスとガラスの間に乾燥空気やアルゴンガスが入っています。この空間が断熱性能を高めてくれます。また、同時に遮音性能が高くなります。

窓ガラスの枚数が多いほど、断熱と遮音効果が高くなります。

複層ガラス

ガラスの枚数ガラスの名称
2枚ペアガラス
3枚トリプルガラス

複層ガラスのサッシは「樹脂サッシ」とアルミと樹脂を組み合わせたリクシル/LIXILの「アルミ樹脂複合サッシ」がメイン。

他に断熱性能が高いサッシの中には「木製サッシ」が存在します。木はアルミと比べて1,500倍も熱が伝わりにくい素材。寒さが厳しい欧州では、多くの住宅が木製サッシを採用しています。

日本国内の住宅で木製サッシの採用は少数派ながら、日本でも木製サッシを製造しているメーカーがあります。

Low-E複層ガラス

YKK ap Low-Eペアガラス(断熱タイプ)
Low-Eペアガラス

Low-E複層ガラスとも呼ばれるLow-Eガラス(Low Emissivity Glass/ロー・エミッシビティ・ガラス(低放射ガラス))とは、ペアガラスやトリプルガラスなどの複層ガラスに「遮熱機能」や「断熱機能」をプラスしたガラス。

少々マニアックなお話ながら、Low-Eガラスには「遮熱タイプ」と「断熱タイプ」の2種類あります。

ガラスの名称機能性
Low-Eペアガラス
(Low-E複層ガラス)
遮熱 or 断熱タイプ
Low-Eトリプルガラス
(Low-E複層ガラス)
遮熱 or 断熱タイプ

Low-E複層ガラスには、ガラスとガラスの間に乾燥空気やアルゴンガスが入っているタイプがあります。断熱性能はアルゴンガス入りのLow-Eガラスの方が上。

そして、見逃せないポイントとして、2枚以上のガラスをサンドイッチするための「ガススペーサー」と呼ばれる部品があります。

ガススペーサーには、アルミスペーサーと樹脂スペーサーの2種類があり、断熱性能は樹脂スペーサーの方が上。

具体的に、Low-E複層ガラスは普通のペアガラスやトリプルガラスと比較して、どのような違いがあるのでしょうか?

Low-E複層ガラス(遮熱タイプ)

Low-Eガラス(遮熱タイプ)

遮熱タイプのLow-E複層ガラスの第2面に薄いLow-E膜(銀、酸化亜鉛などの金属膜)がコーティングされています。 Low-E膜が太陽光の日射熱を反射することで、遮熱効果が得られます。

言わば、室外側の窓ガラスが鏡のような役割を果たし、日射熱(遠赤外線)を反射します。

遮熱タイプのメリット

Low-E複層ガラスの遮熱タイプが持つ最大のメリットは、室内に流入する日射熱を抑制できます。これにより、エアコン効率が向上して夏季の室内がより涼しく、節電効果が得られます。

遮熱タイプのデメリット

Low-E複層ガラスの遮熱タイプのデメリットは冬季、日射熱取得率が小さくなるため、日射熱で部屋が暖まりにくくなります。

Low-E複層ガラス(断熱タイプ)

Low-Eガラス(断熱タイプ)

断熱タイプのLow-E複層ガラスの第3面に薄いLow-E膜(銀、酸化亜鉛などの金属膜)がコーティングされています。 Low-E膜が室内の遠赤外線を反射することで、断熱効果が得られます。

言わば、室内側の窓ガラスが鏡のような役割を果たし、室内の熱(遠赤外線)を閉じ込める効果があります。

断熱タイプのメリット

断熱タイプのLow-E複層ガラスは冬季、エアコン暖房などの暖房器具の熱が室外へ逃げにくくなります。これにより、部屋が暖かく、冬季の暖房費を抑制できます。

更に、冬季の日射熱が室内に流入することで、部屋が暖まりやすくなります。これを日射熱取得効果(にっしゃねつしゅとくこうか)と言います。

断熱タイプのデメリット

夏季、日射熱が室内に流入すると、室温が上がりやすくなります。よって、夏季の日射遮蔽対策(にっしゃしゃへいたいさく)が必要とされます。

Low-E複層ガラスの遮熱タイプと断熱タイプの選択

アルミ樹脂複合サッシ+Low-Eペアガラス(断熱タイプ)に遮熱フィルム、グラフィルNS70/クリア遮熱70を施工
グラフィルNS70/クリア遮熱70ガラスフィルム施工後

Low-E複層ガラスの「遮熱タイプ」と「断熱タイプ」を比較すると、同じメーカーの同一モデルであれば、価格は同じと考えていいです。

そこで、家にLow-E複層ガラスの導入を検討する場合、建物の東西南北の壁に、どちらのタイプを設置するかが重要になってきます。

遮熱と断熱タイプのLow-E複層ガラスをどのように家の各部屋に配置するかは、ハウスメーカーや工務店の建築士とじっくり相談する必要があります。

YouTubeや工務店のブログを検索すると、遮熱と断熱タイプのLow-E複層ガラスの選択について見解が分かれています。

ちなみに、当ブログの管理人は一戸建て住宅の「南」の窓には、「断熱タイプ」が適切だと考えます。そして、「北」の窓には「遮熱タイプ」。

「東」と「西」の窓には、基本的に「遮熱タイプ」。

Low-E複層ガラスの選び方

Low-E複層ガラスの選び方

ガラスメーカーとサッシメーカーのオフィシャルサイトを閲覧すると、Low-E複層ガラスの選び方について表現が異なります。

よって、日本のマーケットは家の各窓に、どちらのLow-Eを選択したらいいのやら?混乱しているように感じます。

以下は、当ブログ管理人の考え方です。

南の窓

リビングなどの南の窓には「断熱タイプ」のLow-E複層ガラスを設置。

理由

リビングの窓(横:1.82m×縦:2m)から、約600Wの日射熱が室内に流入します。これは、こたつ1台分の熱量に相当します。

家のパッシブデザインの観点から、冬季は600Wの無料の日射熱により室内が暖まります。よって、日射熱を室内に入れる断熱タイプのLow-E複層ガラスを選択します。

北の窓

建物の北の窓には「遮熱タイプ」のLow-E複層ガラスを設置。

(他の選択肢)

北の窓に「トリプルガラス」を設置。

理由

夏至の時期(6/21)は、太陽高度が一番高い季節。建物に軒と庇の有り無し、そして、建物の立地条件によっては、太陽光が北の窓に当たります。

夏季、太陽光の照り返しによる輻射熱が北の窓から室内に流入します。これを抑制するためには、北の窓に「遮熱タイプ」のLow-E複層ガラスを設置します。

他の選択肢として、建物の北側の断熱性能を優先させ、普通のフロートガラス×3枚の「トリプルガラス」を設置します。建物の北側の窓は面積が小さく、トリプルガラスであってもコスト的に導入しやすくなります。

東と西の窓

建物の東と西の窓には、基本的に「遮熱タイプ」のLow-E複層ガラスを設置。

理由

太陽高度が低い朝日と西日は、低い角度から窓を通して室内の奥に入ってきます。朝日と西日は眩しく、同時に日射熱が室内に流入し、室温を上げる方向に作用します。

よって、建物の東と西の窓には、基本的に「遮熱タイプ」のLow-E複層ガラスを設置します。但し、諸条件によっては、断熱タイプも選択できます。

ペアガラスやLow-E複層ガラスにガラスフィルムを貼ると熱割れする?

ネット検索すると、ペアガラスやLow-E複層ガラスにガラスフィルムを貼ると、熱割れするという情報がヒットします。

これは最悪、そうなってしまう場合もあれば、熱割れしない場合もあります。これはケースバイケースで一概に言えないのです。

ペアガラスやLow-E複層ガラスの種類と設置環境は千差万別。サッシとガラスの組み合わせを含めたら、星の数ほどになります。

そして、ガラスフィルムの種類も様々。

これらの複合的な要素が複雑に関係してきます。

では、なぜペアガラスやLow-E複層ガラスに不適切なガラスフィルムを貼ると、ガラスが熱割れするリスクがあるのか解説します。

ガラス熱割れのしくみ

日射熱を受けていない窓ガラス

窓ガラスが熱割れする原因、理由

夜間や日中、太陽光が当たらない窓ガラス(北側の窓ガラス)は熱を持ちません。よって、ガラスに応力(おうりょく)が発生しません。

矢印(青)

日射熱を受けている窓ガラス

窓ガラスが熱割れする原因、理由

以下が熱割れ現象のしくみ。

【1】日射熱により、窓ガラス中央部の温度が上昇して膨張。ガラス周辺部(サッシ内側部)は日射熱を受けにくく、温度上昇が緩やか。

【2】ガラス中央部が膨張し、ガラス周辺部に応力が発生。

【3】応力がガラスの強度を超えた瞬間、熱割れが発生。

応力とは?

窓ガラスが日射熱を受けると膨張するものの、見た目は板ガラスの形状を保っています。この時、ガラス板の内部は熱膨張による変形に抵抗する力(引張応力)が働いています。

固形物が変形に抵抗する力のことを「応力(おうりょく)」と言います。

2020年8月17日、静岡県浜松市においてフェーン現象が加わり、「41.1度」の気温を記録しました。

日射熱を受けている南側や西側の窓ガラス(フィルム未施工)にエアコン冷房の冷たい風が当たると、最悪、窓ガラスに亀裂が入る恐れがあるため注意が必要です。

では、ペアガラス&Low-E複層ガラスとガラスフィルムにはどのような関係があるのか解説します。

ペアガラス&Low-E複層ガラスとガラスフィルムの関係

複層ガラス、ペアガラス、Low-Eガラスにガラスフィルムの施工

複層ガラスは、2枚または3枚のガラスを組み合わせた建材。複層ガラスは自由度があり、ガラスの構成を組み合わせることができます。

一般的なフロートガラスを2枚組みこんだサッシもあれば、型板ガラス、網入りガラス、合わせガラスを組み合わせることも可能。これらのガラスは、それぞれ特徴があります。

そして、窓ガラスの設置環境は様々。

多くの一戸建て住宅には、東西南北の4面の壁に窓ガラスが設置されています。家によっては、天窓が設置されています。

まず、直射日光が窓ガラスに当たる、当たらないという違いがあります。そして、垂直以外の角度を付けて設置されている窓ガラスもあります。

更に、窓ガラスに屋外の建造物(看板、格子、電信柱、電線等)や樹木の影がかかる、かからないという違いもあります。

その他、複数の諸条件により、窓ガラスを取り巻く環境は千差万別なのです。

安易なフィルム施工による熱割れリスク

複層ガラス、Low-Eガラスに不適切なガラスフィルムを貼ると、ガラスの熱割れが発生

一般の方がホームセンターなどで不適切なフィルム(断熱フィルム、断熱シート、ミラーフィルム、結露防止シートなど)を購入し、Low-E複層ガラス(Low-Eトリプルガラス)やペアガラスに貼り付けると、諸条件によっては窓ガラスが熱割れするリスクがあります。

Low-E複層ガラス(Low-Eトリプルガラス)やペアガラス

+

不適切なガラスフィルムを施工

窓ガラスが熱割れするリスク有り!

特に、南側に設置されているLow-E複層ガラスに遮蔽係数が低いフィルムを施工すると、熱割れが発生するリスクが高くなります。

Low-E複層ガラス+防犯フィルム

あと、Low-E複層ガラスに防犯フィルムを貼り付ける場合、フィルムの種類によっては要注意です。

窓とガラスフィルム業界の方を除き、以上のようなLow-E複層ガラスやペアガラスとガラスフィルムの相性問題を知っている方は少数派どころか、ゼロに近いでしょう。

なお、建物の北側に設置されているペアガラスやLow-E複層ガラスは、あまり直射日光を受けません。(※夏至の時期、北面ガラスに太陽光が当たることは有ります。)

そのような設置環境のガラスは日射熱の影響を受けにくいため、特定のガラスフィルムの施工が可能な場合もあります。

カーフィルムの場合

ここで余談ながら、自動車用カーフィルムもスモークフィルムからミラーフィルムまでラインアップが豊富です。

当ブログの管理人が知る限り、現在、流通している自動車のドアには、1枚の強化ガラスが採用されています。(TOYOTAセンチュリーを除く)

遠い昔、メルセデス・ベンツSクラス(W140)のドアガラスは、ペアガラスが標準仕様でした。しかし現在、このようなペアガラスを採用する自動車はセンチュリーを除いて見かけることはありません。

自動車のドアガラスは1枚の強化ガラスのため、スモークフィルムもミラーフィルムも施工できるのです。

Low-E複層ガラスとペアガラスにフィルム施工の前に現地調査が必須

仮に、あなたがガラスフィルム施工業者にペアガラスやLow-E複層ガラスにガラスフィルムの施工についてお問い合わせをしたとします。

業者から、「問題無く、施工可能」、あるいは「現地調査をしないで施工可能」といった回答を得たならば、その業者の回答は明らかに間違っています。

当店は現地調査後、特定のガラスフィルムの施工を推奨しない場合があります。そして、窓ガラスの種類と設置環境にマッチするフィルムをご提案させていただきます。

ガラスフィルム施工のプロでしたら、必ず窓ガラスの現地調査を行います。

その後、ソフトウエアで専門的な熱割れシミュレーション計算を行い、窓ガラスの熱割れリスクを判定します。

プロにご相談ください

窓ガラスにフィルムを施工中

繰り返しとなりますけど、一般の方がホームセンター等で遮光シートや断熱シート、目隠しシートなどを購入し、ペアガラスやLow-E複層ガラス(Low-Eトリプルガラス)にフィルムを貼り付けてしまうと、最悪、窓ガラスの熱割れが発生するリスクがあります。

ガラスフィルムの施工は単に「窓ガラスにガラスフィルムを貼り付ければOK」という簡単なものではありません。

フィルムの施工は窓ガラスの種類と設置環境、サッシの種類、窓ガラスとガラスフィルムの相性を含めた、総合的かつ専門的な知識が要求されます。

高性能な窓に安易なフィルムの貼り付けは、十分な注意が必要です。

ペアガラスやLow-E複層ガラスにガラスフィルムの貼り付けを検討されている場合、リスクを回避するために、ガラスフィルムのプロにご相談ください。

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