新興住宅地を歩くと、大手ハウスメーカーから地元の工務店が建てた家まで、様々なデザインの家を間近で見ることができます。
中には、設計事務所に依頼したとおぼしきRC造の家を見かけることもあります。
まさに、新興住宅地は新しい家が立ち並び、百花繚乱の様相を呈しています。
そんな住宅地の家々を見ることで、大雑把に夏は涼しく、冬は暖かい家を見分ける方法があります。
「見分けてどうするの?」とお思いかもしれませんけど、家づくりを検討されている方にとってためになる情報です。
そして、夏はちょっと暑く、冬はちょっと寒い一戸建て住宅に住んでいる方は我が家の欠点を認識して対策する方法があります。
もちろん、家の設計や工法、断熱材、窓などの複数の条件によって、家の断熱性能に違いがあります。ただ、家の設計には普遍的で簡単な原理原則があるのです。
当ページでは「建物と表面積」の関係に絞って1年を通して快適な家について考えてみます。更に、コスパが高い家の暑さ&寒さ対策をご紹介します。
3種類の家
以下、3種類の家があるとします。
全ての家は「縦1」×「横1」×「奥行1」サイズの立方体を「8個」組み合わせてあります。
・Type1からType3まで、全ての家の延べ床面積は「8」。
・工法は全て同一。
・同一の断熱材と窓を使用。
・窓の面積は全て同じ。
Type1-立方体(正六面体)の家
【Type1】立方体(正六面体)の家の表面積は?(基礎の面積を含めます。)
ヒント:1枚の外壁の面積は「4」。
答えは、次の段落にて。
Type2-直方体の家
【Type2】の直方体の家の表面積は?(基礎の面積を含めます。)
ヒント:正面の外壁の面積は「8」。
答えは、次の段落にて。
Type3-L字型の家
Type3の表面積は?(基礎の面積を含めます。)
ヒント:屋根の面積は「8」。
答えは、次の段落にて。
Type1からType3の各表面積
いかがでしたか?ちょっとしたIQテストのようでしたか?
では、Type1からType3の各表面積をお答えします。
Type1の表面積
Type1は正六面体の家。よって、4×6面=24。
答えは、「24」。
Type2の表面積
Type2は直方体の家。
・屋根の面積は4。
・基礎の面積も4。
・手前の外壁の面積は8。
・反対側の外壁の面積も8。
・左の外壁の面積は2。
・右の外壁の面積も2。
合計すると答えは、「28」。
Type3の表面積
Type3はL字型の家。
・屋根の面積は8。
・基礎の面積も8。
・手前の外壁の面積は7。
・反対側の外壁の面積は9。
・家の端の面積は1+1=2。
合計すると答えは、「34」。
家の表面積の違いに注目
Type1, Type2, Type3の延べ床面積は全て「8」。3タイプの室内の広さは全て同じです。ところが、家の設計によって、家の表面積に無視できない大きな違いがあります。
Type1の表面積は「24」に対して、Type3は「34」。
34×1/24=1.416・・・
Type3の表面積はType1の約「1.4倍」。外皮(家)の表面積が大きいということは、家が外気温の影響を受けやすくなり、断熱性能が下がります。
夏
日本の夏は蒸し暑さが厳しく、地域によっては40℃超の外気温を記録します。
家の表面積が大きいと、夏、室内が暑くなりやすくなります。
冬
家の表面積が大きいと、冬、室内が寒くなりやすくなります。
Type1からType3の相違点
夏は涼しく、冬は暖かい家はどれ?
夏は涼しく、冬は暖かい家は「Type1」と「Type2」。
Type2は南側に大きな窓を設置できるため、日射取得により冬は暖かいと言えます。
夏は暑く、冬は寒い家はどれ?
夏は暑くなりがちで、冬は冷えやすい家は「Type3」。
L字型やコの字型の家、中庭がある家は建物の表面積が増えるため、それだけ家の性能が低下する傾向があります。また、冷暖房費が高く家のランニングコストが上昇します。
坪単価が一番高い家はどれ?
坪単価が一番高い家は「Type3」。
理由として、Type3は屋根と基礎の面積が一番広いため、工事費が割高になります。もちろん、Type3のような家を建てるには広い土地が必要なため、土地の取得コストが高くなります。
地震に弱い家はどれ?
地震に弱い家は「Type3」。
Type3は平屋のため、倒壊の心配は少ないと言えます。しかし、大きな地震が発生すると、建物が直角に折れ曲がっている部分に歪みやねじれが生じやすくなります。
まとめ
立方体(正六面体)の家は外観がシンプル。言い換えますと、デザインは単調です。しかし、立方体の家は表面積が小さいため、外気温の影響を受けにくく、地震にも強くなります。
他方、L字型の家や複雑にデザインされている家の外観は立体的ではあります。
しかし、L字型の家や複雑にデザインされている家は表面積が大きいため、外気温の影響を受けやすく、設計によっては地震に弱くなる傾向があります。
・家のデザインが立方体(正六面体)に近づくほど、表面積が小さくなり、外気温の影響を受けにくくなる。(夏は涼しく、冬は暖かい傾向がある。)
・L字型の家やコの字の家は表面積が大きく、外気温の影響を受けやすくなる。(夏は暑く、冬は寒い傾向がある。)
・L字型の家やコの字の家は大きな地震により建物に歪みやねじれが生じやすくなる。
家の夏の暑さ、冬の寒さ対策
Type3のようなL字型の家やコの字型の家に憧れている方は、先ほどのようなデメリットもあることを頭の片隅に入れて家づくりを検討することで、よりプランが広がります。
そして、L字型の家やコの字型、中庭のある家に住んでいる方にとっては、ショッキングな内容だったかもしれません。しかし、ここで落ち込まないでください。
気分を変えて、ここで家の暑さと寒さ対策を検討してみてはいかがでしょうか?
家の最大の弱点は窓
建築物の最大の弱点は窓。これは、マンションから一戸建て住宅、ビルまで全ての建築物に共通しています。建築士や建築家であれば、これは常識です。
フロートガラス(普通のガラス)そのものの断熱性能は低く、3mm厚の透明フロートガラスの熱貫流率(U値)は6.0W/m2・K。
これが理由となり、夏、日射熱が窓ガラスを通して室内に入り、室温を上げてしまいます。そして、冬、冷気が窓ガラスとサッシを冷やし、室温を下げてしまいます。
そこで、新築住宅に「ペアガラス+樹脂サッシ」が設置されることが多くなりました。今や、「ペアガラス+樹脂サッシ」がほぼデフォルト化しています。
もちろん「ペアガラス+樹脂サッシ」の採用により、家の断熱性能が高くなるものの、それでも、家の弱点は窓ガラスであることに変わりはありません。
そこで、窓の性能を上げることで対策できるのです。窓の性能を上げる対策として、2つ考えられます。
高性能サッシ&複層ガラスへ交換
今現在、家の窓が「単板ガラス+アルミサッシ」ならば、より高性能な「ペアガラス+樹脂サッシ」に交換することで、窓の断熱性能を上げることができます。
次に、今の家の窓が「ペアガラス+樹脂サッシ」ならば、より高性能な「遮熱タイプのLow-Eガラス」や「断熱タイプのLow-Eガラス」に交換することで、より窓の性能を上げることができます。
しかし、この対策の最大の問題は窓交換の工事費とコストパフォーマンス。
家じゅうの窓を全て高性能タイプへ交換するとなると、外壁の一部を壊してサッシを交換する工事が必要となることもあります。よって、工事費が高額になります。
また、高性能サッシと複層ガラスに交換後、夏と冬の冷暖房費が削減できても、浮いたお金で将来的に工事費用を回収することはまず難しくなります。
以上、2つの大きな障壁により、高性能サッシと複層ガラスへの交換は非常に難しいのです。
そこで、もっと桁違いにコストが安く、暑さと寒さ対策を可能とする方法があります。
それは、今の窓ガラスに高い機能性を持つ遮熱フィルム、または、遮熱断熱フィルムを貼り付ける方法です。
ガラスフィルムで窓ガラスをカスタマイズ
家の暑さ、寒さ対策として、窓ガラスに「遮熱フィルム」や「遮熱断熱フィルム」を施工する方法があります。この方法で、今以上に快適な室内空間を整えることができます。
遮熱フィルム
夏季、南側の窓から室内に入り込んでくる日射熱が室温を上げてしまいます。この場合、暑さ対策として窓ガラスに「遮熱フィルム」を施工します。
遮熱フィルムが日射熱を大幅にカットしてくれるため、室内が涼しく、エアコンの負荷が減少してエアコン効率が向上します。よって、電気代の節約にも繋がります。
詳細は関連記事をご参照ください。
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遮熱断熱フィルム
冬季、部屋を冷やしてしまう最も大きな原因は窓ガラス。そこで、寒さ対策として窓ガラスに「遮熱断熱フィルム」を施工します。
北側の窓ガラスには「遮熱断熱フィルム」を選択します。
熱貫流率(U値)が低い遮熱断熱フィルムを選ぶことで、暖められた室内の熱が外へ逃げにくくなります。室内が暖かく、エアコンの負荷が減少してエアコン効率が向上します。よって、節電にも繋がります。
詳細は関連記事をご参照ください。
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