この世のありとあらゆるカーペットの中で最も価値が高く、高級とされている「ペルシャ絨毯」。
誰もが耳にしたことがあるペルシャ絨毯ながら、漠然としたイメージしか湧かないのではないでしょうか?
高級なイメージのあるペルシャ絨毯ながら、意外とペルシャ絨毯の真実は知られていません。漠然と「ペルシャ絨毯はなぜ高い?」といったイメージがあるのではないでしょうか。
本物のペルシャ絨毯は巷で売られているペルシャ絨毯風ラグとは根本的に異なります。
そこで、ペルシャ絨毯とはいったい何?産地、種類、作り方、価格、相場、選び方、そして、紫外線によるペルシャ絨毯の日焼け、色あせ対策について解説します。
ペルシャ絨毯とは?
正式なペルシャ絨毯とは、イラン国内の職人の手作業で作られている絨毯。イラン以外で作られている絨毯もペルシャ絨毯として流通しているものの、それらは正式なペルシャ絨毯ではありません。
数千年以上の歴史のあるペルシャ絨毯は芸術性と実用性を兼ね備えています。これが、他の芸術作品と大きく異なる点。
そして、ペルシャ絨毯は化学物質過敏症の方にとって大敵な化学染料やVOC(揮発性有機化合物)を一切含んでいません。ペルシャ絨毯は揮発性成分を含まないため、子供や可愛いペットにも優しいカーペットです。
ペルシャ絨毯の素材はウールとシルクの2種類。
ペルシャ絨毯の産地
ペルシャ絨毯はイランの南部を除く各地で作られています。ペルシャ絨毯はイランの伝統工芸品であり、芸術品です。
イラン国内で作られたペルシャ絨毯こそ、本物のペルシャ絨毯。イラン以外で作られたペルシャ絨毯はペルシャ絨毯ではないのです。
ペルシャ絨毯の種類
ペルシャ絨毯は「ウール絨毯」と「シルク絨毯」の2種類。シルク素材の方が高級なイメージがあるかもしれませんけど、必ずしもそうとは言えないのがペルシャ絨毯の世界。
世界的にウールのペルシャ絨毯の需要が圧倒的に多い背景から、ペルシャ絨毯の全生産量の90%以上はウール絨毯です。
ウール絨毯
メリット
・摩擦に強い
・踏まれることで光沢が出る
・耐久性が高い(50年~100年)
デメリット
・光沢はシルクに及ばない
シルク絨毯
メリット
・光沢の美しさ
・肌ざわりが滑らか
デメリット
・摩擦に弱い
・水濡れに弱い
・紫外線に弱い
モダン・ギャッベの真実
日本で人気のモダン・ギャッベは現代のニーズにマッチするように、イランの南西部で作られているペルシャ絨毯。
そもそも「ギャッベ」は現地で「クオリティの低い絨毯」という意味合いがあります。モダン・ギャッベは本物のペルシャ絨毯と比較すると、民芸品に近い製品。
ギャッベはイラン現地の遊牧民が日常生活で使ってきたポピュラーな絨毯。ギャッベは古来から伝わっている伝統製法で作られているペルシャ絨毯とは一線を画す製品なのです。
もし、ペルシャ絨毯の店舗店員から「ギャッベはとても希少性が高く、現地ではとても高級な絨毯です。」といった説明を受けたならば、それは事実ではありません。
ここで誤解のないように押さえておきますと、ギャッベはナイロンやポリエステル、PP(ポリプロピレン)、アクリルなどの化学繊維で作られているカーペットと比較して、桁違いの高級品です。
ただ、ペルシャ絨毯の世界は上には上があり、プレミアムなペルシャ絨毯は110万ノット以上。このハイエンドクラスのペルシャ絨毯からすると、ギャッベは相対的に民芸品レベルという意味なのです。
ギャッベはペルシャ絨毯の中では民芸品レベルのポジショニングながら、巷の化学繊維のカーペットよりは桁違いに高級な製品ではあります。
では、今出てきた「ノット」という言葉について説明します。
ギャッベのノット数
ペルシャ絨毯のクオリティの目安になる指標は、織の目の細かさを示す「ノット密度」。ノットとは結び目の数を意味します。以下は目安となります。
ギャッベの種類 | ノット数 |
ポピュラー・ギャッベ | 20~30万ノット |
ファイン・ギャッベ | 約40万ノット |
スペシャルファイン・ギャッベ | 約60万ノット |
最高級ペルシャ絨毯 | 110万ノット以上 |
確実に言えるのは「20~60万ノット」のギャッベは結び目が粗く、高級なペルシャ絨毯ではありません。ギャッベの購入時、店員にノット数を聞いてみるといいでしょう。
もちろん、比較的、買いやすい価格のギャッベであれば、その製品の背景を理解して購入する分には何ら問題はありません。
「ペルシャ絨毯に興味があるけど、予算の問題もあって本物の高級ペルシャ絨毯はちょっと・・」
「化学染料やVOCを含まない安全なカーペットを使いたい。」
「長く使えるカーペットを使いたい。」
という方にとって、ギャッベは入門用のペルシャ絨毯という立ち位置かもしれません。
ペルシャ絨毯はギャッベのようなポピュラーな物から超高級絨毯まで、ピンキリの世界であることを理解して、入門用としてギャッベを購入するといいでしょう。
なお、ここで注意したいのは、もしギャッベが本物のペルシャ絨毯(110万ノット以上)と大して変わらない価格で販売されているならば、それは、あまりにも高額。
あたかも、普通のSEIKOクオーツ腕時計が20万円、30万円で売られているようなもの。それでは、あまりにも割高なのです。
ペルシャ絨毯はこうして作られる
デザイン
まず最初、デザイン担当が方眼紙にペルシャ絨毯をデザイン。
糸の染色
織る糸を染める。
織り
職人が手作業で縦糸と横糸を交差させ、それにパイル糸を絡み合わせて織る。
剪毛
シャーリングマシーンと呼ばれる剪毛機でパイルをカットして揃える。
洗浄
剪毛機でパイルをカットした際の糸くずなどを洗浄する。
成型
洗浄したペルシャ絨毯の形を整える。
乾燥
天日でペルシャ絨毯を乾燥させる。
仕上げ
エッジ仕上げなどの処理を経て完成。
ペルシャ絨毯はなぜ高い?
クオリティの高い本格的なペルシャ絨毯の小売価格は、60×90cmサイズで100万円前後から、ダイニングサイズで600~700万円クラス。
インテリアショップに並んでいる普通のカーペットと比べると、「ペルシャ絨毯はなぜ高い?」となります。
ペルシャ絨毯はイランの職人の手作業で作られている製品。
ペルシャ絨毯の職人の技量によって差があるものの、1日あたり数ミリ程度、織り進めるのが限界です。ペルシャ絨毯が完成するまでに要する期間は早い物で半年、2×3mサイズの絨毯が完成するまで1~3年の年月を要します。
織(おり)が細かいペルシャ絨毯ほど、高級で値段が高くなります。更に、工房のブランドや素材の材質によって値段が変わります。
1m2あたりのノット数(結びの数)が110万個以上ならば、最高級のペルシャ絨毯に入ると考えて間違いありません。
ペルシャ絨毯は機械で大量生産できるような物ではありません。
1枚のペルシャ絨毯が完成するまでに膨大な時間と人件費がかかるため、ペルシャ絨毯はまさに工芸品であり芸術品。世界で1枚の貴重品です。
絨毯商が現地で仕入れたペルシャ絨毯の現地価格にバイヤーの人件費、渡航コスト、輸送コストに販売利益が加味されるため、ペルシャ絨毯の値段は高くなります。
このような背景を持つペルシャ絨毯は、ニトリやIKEA/イケアのペルシャ絨毯風ラグとは根本的に異なります。もちろん、ここでニトリやIKEAの製品を否定するものではありません。
本物のペルシャ絨毯と巷のペルシャ絨毯風ラグを比較すると、自動車の内装に使われる本物のウォールナットパネルとプラスチック製の木目調パネル以上の違いがあるという意味です。
ペルシャ絨毯の価格相場
60×90cmサイズのシルク絨毯の相場を例に挙げてみますと、
【マラゲ産】20万円前後
【ザンジャン産】30万円前後
【クム産】平均40~45万円
以上がシルク絨毯の大雑把な価格の目安です。各平均価格から上下に10万円以上、差がある商品があれば、高いのか安いのか目安になります。
ペルシャ絨毯のクリーニング
ペルシャ絨毯はクリーニングできます。目安として10年に1回程度のクリーニングが目安のようです。
ただ、一般的なクリーニング店はペルシャ絨毯に関するノウハウが無く、手に負えない場合があります。もし、クリーニングに出したペルシャ絨毯が変色してしまったら最悪で、もう後戻りできません。
そこで、ペルシャ絨毯を購入した店舗に相談することをお勧めします。
ペルシャ絨毯選びは良い絨毯商選びから
ペルシャ絨毯に工業製品のような定価(希望小売価格)は存在しません。バイヤーがイランで買い付けたペルシャ絨毯の現地価格に流通経費と販売利益を加えたものが販売価格。
もし、素人がペルシャ絨毯に関して座学で知識を身に着け、絨毯を微に入り細に入り観察したところで、そのペルシャ絨毯の品質と価値を見分けるのは非常に難しく、不可能と言っていいです。
ペルシャ絨毯を中古車に例えてみますと、多少なりとも似ている部分はあります。少々、違和感があるものの、あくまで例えです。
というのも、自動車のプロではないお客さんが中古車の至る所をチェックしても、その中古車のコンディションと販売価格のバランスを見極めることは不可能です。
中古車販売のプロでさえ、中古車の仕入れは難しく、仕入れで失敗する場合があるのです。
このような背景から、昔から「中古車選びは店選び、人選びから。」と言われます。
話を戻しますと、オールドやアンティークのペルシャ絨毯は別として、品質の高いペルシャ絨毯はバイヤーの厳しい審美眼によって現地から輸入された製品。素人がその品質を見極めるのは不可能なのです。
ペルシャ絨毯のニセ物が流通していると噂されていることもあり、素人は本物のペルシャ絨毯を見分ける審美眼を持っていません。
よって、ペルシャ絨毯も「ペルシャ絨毯選びは店選び、人選びから。」と言えるのです。
ペルシャ絨毯の選び方
・ペルシャ絨毯選びは店選び、人選びから。
・ペルシャ絨毯に惚れている店を選ぶ。
・ペルシャ絨毯に精通している店は情報量が圧倒的。
・オークションやネット通販ではなく、店舗で自分の目で絨毯を確認する。(写真の色味は現物とは100%異なる)
・人の出入りが多い場所には、ウール絨毯がおすすめ。
・シルク絨毯はベッドルームや書斎向き。
・ペルシャ絨毯に30%OFFや50%OFFはありえない。(派手なディスカウントセールをする店舗は避ける)
→ 恒常的に大幅なディスカウントセールをしている店舗があるならば、店の小売価格の設定に疑問を持つ必要がある。(店舗の期間限定、在庫一掃セールは別。)
・ペルシャ絨毯の鑑定書に価値は無い。
・品質が高くてお買い得なペルシャ絨毯は無い。
・ペルシャ絨毯との出会いは一期一会。自分の感性に響く絨毯が見つかったら、早めに購入を決める。
ペルシャ絨毯の粋な購入方法
ペルシャ絨毯を輸入販売するビジネスモデル
ペルシャ絨毯の購入を検討中の方は、いい商品をなるべく安く買いたいと考えるくらいではないでしょうか。
一般の方がペルシャ絨毯を輸入販売している業者のビジネスモデルを考えることは、ほとんど無いと思われます。
そこで、ペルシャ絨毯を輸入販売するビジネスモデルの経費を大まかにシミュレーションしてみます。シミュレーションにより、ペルシャ絨毯の流通過程が見えてくるはずです。
以下の内訳以外にも経費がかかると考えられるものの、あくまで大まかなシミュレーションです。
ペルシャ絨毯の輸入販売ビジネスの経費内訳
・航空券代(Skyscannerなどで検索)
・海外旅行の保険代
・バイヤーの人件費
・日本の空港までの往復交通費
・イランの空港とホテルまでの往復交通費
・外貨両替手数料
・ホテル宿泊代
・飲食代
・現地での交通費
・ペルシャ絨毯の仕入れ代金
・ペルシャ絨毯の運送代
・貨物海上保険
・日本の関税
・雑費
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ペルシャ絨毯が日本に到着
▼
・船便で届いたペルシャ絨毯は人による品質チェック
・店舗家賃
・販売員の人件費
・光熱費
・通信費
・雑費
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販売完了
バイヤーの現地仕入れから日本における販売完了まで、相応の経費と日数が必要なことが見えてきます。経費内訳の中で、航空券代が占める割合が大きくなるでしょう。
ペルシャ絨毯の買い付けには、決して小さくない経費がかかるため、少数枚の仕入れでは赤字なのは間違いありません。としますと、ペルシャ絨毯の仕入れには、余裕のある運転資金が必要であることが自ずと見えてきます。
バイヤーがイラン現地で高級なペルシャ絨毯を買い付けして日本に輸入し、商品が売れるまで会社の運転資金は眠ったまま。しかも、ペルシャ絨毯は芸術品であり、贅沢な嗜好品のため、購入する層は限定的。
総合的にペルシャ絨毯の輸入販売ビジネスを勘案しますと、販売価格の粗利が1割、2割では割に合わないと推察できます。
もちろん、貿易ビジネスは為替変動のリスクもあります。また、運転資金を借り入れている場合、金利負担が発生します。
以上から、ペルシャ絨毯の輸入販売は難しいビジネスに入ると考えられます。
店舗でペルシャ絨毯を購入
例えば、クム産のシルク100%ペルシャ絨毯(サイズ100×60cm)の店頭値段が490,000円(税別)とします。
消費税が10%で49,000円。合計価格は539,000円。
もし、あなたが価格交渉を望むのであれば、9,000円OFFの530,000円で商談するとしましょう。
販売店員は、「ペルシャ絨毯を1枚でも多く売りたい。しかし、大幅値引きしたら利益が減る、あるいは赤字になってしまう。」といった心理が働いているはず。
商談の内容を計算しますと、
9,000円×1/539,000円≒0.016
0.016×100=1.6%
9,000円の値引きは539,000円の商品代金に対して「1.6%」の値引き。お客さんがこの値引き金額でペルシャ絨毯を当日、購入してくれるのであれば、店長や社長は高い確率でOKを出すでしょう。
このようなスマートな商談ならば、お客さんも店舗も両者の顔が立ちます。
ペルシャ絨毯の小売価格には、イラン職人の手間と技術、魂、希少価値、バイヤーの審美眼と労力、仕入れの現地価格、輸入販売会社の経営が含まれています。
ペルシャ絨毯のプロではない当ブログ管理人の個人的な考えとして、ペルシャ絨毯は値段を叩いて買うような製品ではないと思います。とにかく安くカーペットを買いたいのであれば、ペルシャ絨毯風ラグで十分です。
まとめ
ペルシャ絨毯は工芸品であり芸術品。それでいて、実用性を兼ね備えています。ペルシャ絨毯を鑑賞用として購入する方もいるようですけど、本来の用途はカーペット。
もし、あなたがペルシャ絨毯の購入を検討しているならば、急がず、複数の実店舗で絨毯を眺めながら目を養い、吟味することをおすすめします。
ネット検索でペルシャ絨毯の販売店が見つかったら、店舗に足を運んでみてはいかがでしょうか?なぜなら、ネットの写真の色味は現物とは100%異なるからです。
そして、あなたがペルシャ絨毯を愛用しているならば、せっかく出会えた貴重なペルシャ絨毯を末永く大切にすることで、イランの職人さんたちの冥利に尽きるのではないでしょうか。
ペルシャ絨毯の紫外線対策
ウールのペルシャ絨毯は耐久性が高く、その寿命は50年とも100年とも言われます。自分の子供のみならず孫の世代まで、使用することができるのがウール絨毯。
対する、シルクのペルシャ絨毯にウール絨毯と同等の耐久性を求めるのは酷なものの、シルク絨毯ならではの良さがあります。
これら、ウール絨毯とシルク絨毯の色合いを長く保つためには、太陽の紫外線に注意を払うことが大切です。
特に、シルク絨毯は紫外線に弱く、悪条件が重なると変色が進んでしまいます。ウールは紫外線をカットする繊維ながら、毛糸である以上、紫外線の影響を受け続けると退色、色あせの影響を受けてしまいます。
室内に流入する紫外線
太陽の紫外線(UV-A、UV-B)は窓ガラスから室内に流入しています。紫外線は屋外の道路や建物で乱反射し、日陰の室内にも流入しています。
そこで、窓から流入する紫外線をカットする方法として、窓ガラスにガラスフィルムを施工する方法が最も効果的です。
UVカットフィルムが紫外線を99%以上カット
窓ガラスにガラスフィルムを施工することで、太陽の紫外線(UV-AとUV-B)を99%以上カットできます。
当店が取り扱っているプロ業者用ガラスフィルムは全て99%以上、紫外線をカットできます。ガラスフィルムが紫外線をカットすることで、次のメリットがあります。
・ペルシャ絨毯の退色、色あせの抑制。
・フローリングや畳、家具、調度品、絵画、壁紙などの色あせ、劣化の抑制。
・肌の日焼け防止。
・肌のシミ、シワ、たるみを予防。
・台風による飛来物が窓を直撃した場合、ガラス飛散防止。
ガラスフィルムが紫外線からペルシャ絨毯のみならず、室内のあらゆる物を守ってくれます。
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